「発達障害の特性はWebデザインに向いている」と聞く一方で、「コミュニケーションや納期管理ができるだろうか」と不安になる人もいると思います。
私はASDグレーゾーンの傾向があり、以前は小売業などで電話対応やマルチタスクに苦労してきました。その後Webデザインを学び直し、現在はIT企業の障害者雇用枠で、フルリモート勤務をしながらWebサイト制作、WordPress制作、ブログ運営などを担当しています。
この記事では、Webデザイナーの仕事をきれいな部分だけで説明しません。初めて担当したLP制作で約2か月かかったこと、修正対応や工数の見積もりで苦労したこと、スクールでの挫折、不採用が続いた就職活動まで、私の経験をもとにお伝えします。
この記事の結論
- 発達障害やASDという診断名だけで、Webデザイナーへの向き・不向きは決まりません。
- 私は過集中や細部へのこだわりを制作に活かせましたが、疲労、タスク管理、工数の見積もりには対策が必要でした。
- Webデザインは見た目を作るだけでなく、目的の整理、クライアントとの調整、コーディング、公開後の確認まで含む仕事です。
- 私が仕事を続けやすくなった大きな理由は、得意な業務に加えて、フルリモートやテキスト中心の連絡など、自分に合う環境を選べたことです。
この記事で紹介する「役立った特性」や「働きやすい環境」は、私個人の経験です。同じASDでも、得意なこと、疲れやすさ、必要な配慮は一人ひとり異なります。
結論:Webデザイナーに向いているかは「特性×仕事内容×環境」で考える
私はWeb制作の仕事に就いてから、好きなことや得意なことを仕事に活かせる場面が増えました。ただし、「ASDだからWebデザイナーに向いている」と単純には考えていません。
実際に働いてみると、強みとして活かせた面と、今も工夫が必要な面の両方がありました。
| 私が経験したこと | 制作で活かせた面 | 必要だった対策 |
|---|---|---|
| 一つの作業へ深く集中しやすい | コーディングや細かな調整を続けられる | 疲れ切る前に作業を中断する |
| 細部が気になりやすい | ピクセル単位でレイアウトを整えられる | 自分の好みより目的と要望を優先する |
| 分からないことを調べ続けられる | エラーの原因を探し、試行錯誤できる | 解決できないときは詳しい人へ相談する |
| タスク管理や時間の見積もりが苦手 | 工程を細かく分けるきっかけになった | 工程ごとに工数を出し、それぞれに余裕を持たせる |
| 対面や電話では負荷がかかりやすい | テキストなら確認してから返答できる | 連絡方法や働く環境を自分に合わせる |
大切なのは、特性を無理に「強み」と言い換えることではありません。仕事内容と環境を具体的に知り、自分が力を発揮できる条件と、対策が必要な負荷を分けて考えることだと思います。

Webデザイナーの実際の仕事内容
厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」では、Webデザイナーは依頼主の要望を確認し、サイトの目的やコンセプトを決め、画面のレイアウトや素材を作成する仕事として紹介されています。勤務先や分業体制によっては、HTMLやCSSなどを使った制作まで担当します。
私が経験したLP制作では、次の工程を一通り担当しました。
- クライアントへのヒアリング
- 誰に何を伝えるかを整理する情報設計
- ワイヤーフレームの作成
- デザインカンプの作成
- HTML・CSSなどによるコーディング
- テスト環境へのアップ
- 表示や動作の確認
- 本番環境へのアップ
Webデザイナーという名前から「画面をおしゃれにする仕事」を想像するかもしれません。しかし実務では、ページの目的を確認し、情報の順番を考え、正しく動く状態にして公開するところまで、さまざまな工程があります。

最初のLP案件で目指したのは「LINE相談を増やすこと」
私が初めて担当したのは、障害年金を支援する社労士さんのLP制作でした。ジモティーで募集を見つけ、実績を作るために応募した無報酬の案件です。
作るものを先に決めたのではなく、打ち合わせを重ねるなかで「障害年金に悩んでいる人へ情報を届け、社労士さんへのLINE相談につなげる」という目標が決まりました。
ページでは、お客様の声やSNSでの発信をどう見せるかに力を入れました。Googleマップの口コミへ移動できるリンクを設置し、SNSの投稿は自動で流れるスライダーとして実装しました。
実際の制作ページ:アイビー障害年金サポート
スライダーが動かず、レイアウトも崩れた
外部のスライダー機能を利用して実装しようとしましたが、最初は思うように動きませんでした。ようやく動いたと思っても、今度はデザインやレイアウトが崩れます。機能と見た目の両方を調整する作業にはかなり苦労しました。
できる限り自分で調べ、コードを修正しながら解決しました。それでも分からない部分は、詳しい人に確認しました。
この経験から、Web制作では「最初から何でも知っていること」より、問題を調べて試す力と、抱え込まずに相談する力の両方が必要だと感じています。
成果物だけでなく、受け答えも評価された
納品後のアンケートでは、クライアントさんからサービス全体について「非常に満足」という評価をいただきました。デザインや構成だけでなく、普段の受け答えまで評価してもらえたことが特にうれしかったです。
私はLINEで連絡を受けたら、できるだけ早く返答するようにしていました。また、相手の悩みに対して一方的に答えを出すのではなく、どう解決するかを一緒に考える姿勢を大切にしました。
発達障害があると、コミュニケーションを不安に感じる人もいると思います。私も得意な場面ばかりではありません。それでも、相手の話を聞くこと、分からない点を確認すること、返事を止めないことは、意識して実践できました。
Web制作で活かせたASDの特性
過集中はコーディングや問題解決に活かせた
私は興味のある作業へ入り込むと、長い時間集中できることがあります。特にコーディングや、うまく動かない機能の原因を探す場面では、この集中力が役立ちました。
ただし、集中できることと、無理なく働き続けられることは別です。作業をやりすぎると、終わったあとに疲れ果ててしまいます。過集中を長所だけとして扱わず、中断する仕組みや回復時間まで用意することが必要でした。
私が実践している過集中への対策は、次の記事で詳しく紹介しています。

細部へのこだわりは、仕上がりを整える力になった
デザインでは、近接・整列・反復・コントラストという「デザインの4原則」を意識しています。配置や余白が気になると、ピクセル単位で調整し、納得できるところまで仕上げることがあります。
一方で、自分が作りたいデザインと、クライアントが形にしたいものは別です。自分の好みだけを優先すれば、ただの自己満足になってしまいます。
まずはクライアントの要望に応え、誰に何を伝え、どんな行動につなげるページなのかを考える。そのうえでデザインを洗練させることが、成果を目指すWebサイトには必要だと考えています。
実際に苦労したことと、現在の対策
コーディングと修正対応で約2か月かかった
初めてのLP案件で最も苦労したのは、HTMLやCSSなどの専門知識が必要なコーディングでした。修正依頼もたびたびあり、その都度対応していたため、完成まで約2か月かかりました。
私は今後も、修正回数を一律に制限するつもりはありません。クライアントさんと意見を出し合いながら、良いサイトを一緒に作りたいからです。ただし、制限を設ける制作者もいますし、どちらが正解という話ではありません。
回数を制限しない場合ほど、制作に入る前の情報設計や、対応範囲の確認が重要になります。
情報設計を後回しにして「修正地獄」になった
別のホームページ制作では、情報設計を十分に詰めないままデザインへ進んでしまったことがあります。その結果、あとから構成や配置が変わり、デザインだけでなく全体へ修正が入りました。
納期は延び、作業時間も大幅に増え、費用に見合わない仕事になってしまいました。私もクライアントさんも余裕を失い、疲労とストレスが大きくなりました。
この経験以降、私は「どんなサイトを作るか」より先に、次の3点を確認することが大事だと考えています。
- 誰に伝えるのか
- 何を伝えるのか
- 最終的にどんな行動をしてもらいたいのか
この3点を決めてから、情報の順番や見せ方を考えます。最初の設計が曖昧なままだと、後工程へ進むほど修正範囲が大きくなるからです。

工数は工程ごとに分けて見積もる
私はタスク管理やスケジュール管理が得意ではなく、以前は工数の見積もりが甘くなることがありました。
現在は、制作全体を一括で考えません。「ヒアリング」「情報設計」「デザイン」「コーディング」「確認・公開」のように工程を分け、それぞれに必要な時間を見積もってから合計します。
さらに、どの工程にも少しずつ余裕を持たせます。想定外の修正やエラーが起きても、後から調整しやすくなるためです。
複数のタスクを整理する方法は、こちらの記事にまとめています。

私がWebデザインを学び、仕事にするまで
発達障害のWebデザイナーを知ったことがきっかけ
Webデザインに興味を持ったきっかけは、同じように発達障害がありながらWebデザイナーとして活動している方のブログを読んだことでした。
それまでは小売業など、Webとは異なる仕事をしていました。パソコンを使って好きなことを仕事にする姿に憧れ、仕事を辞めてWebデザインスクールへ通い始めました。
コーディングでつまずき、一度は諦めかけた
最初のスクールでは、1年目にコーディングでつまずき、モチベーションを失いました。Webデザイナーになることを一度は諦めかけています。
当時は、動画を見ながら一人で進める学習方法が自分に合っていませんでした。分からないところが残っても、その場ですぐ質問できなかったからです。
そこで、ベテランのWeb講師からマンツーマンで教わるスクールへ移りました。分からないことをすぐ質問でき、PhotoshopやIllustrator、コーディングの操作だけでなく、案件の進め方、ポートフォリオの作り方、選ばれる人材の考え方など、実務経験がある講師だからこそ分かる内容も学べました。
動画学習が合う人もいます。私にとって重要だったのは、有名な方法に無理に合わせることではなく、自分が疑問を解消しながら続けられる学習環境へ変えることでした。
PhotoshopとIllustratorは現在の実務でも使っている
スクールで学んだPhotoshopとIllustratorは、現在の実務でも使用しています。すべての機能を最初に暗記するのではなく、画像制作やバナー制作など、そのとき必要な機能から覚えていくほうが進めやすいと感じました。
PhotoshopやIllustratorを使いたい場合は、必要なソフトが含まれているか、料金や利用条件をAdobe公式サイトで確認してから選んでください。
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実績を作り、現在の障害者雇用へつながった道のり
最初は家族・知人・募集案件へ積極的に動いた
スクールで学んだあと、最初から安定して仕事を受けられたわけではありません。家族や知人から依頼を受け、クラウドワークスのデザインコンペへ応募し、ジモティーの募集も探しました。
初案件となった社労士さんのLP制作は無報酬でしたが、ヒアリングから公開までを経験し、クライアントさんから評価をいただけたことで、自信とポートフォリオへ掲載できる実績につながりました。
ただし、実績作りのために無報酬案件を無条件で勧める意図はありません。対応範囲、納期、実績として公開できるか、制作物の権利などを事前に確認し、自分が納得できる条件かを判断する必要があります。
私が採用時にも提示したポートフォリオはこちらです。
不採用が続いたあと、ハローワークで現在の会社に出会った
就労移行支援に通いながら就職活動をしていた時期は、不採用の通知が続きました。それでも応募を続け、最後にハローワークで偶然見つけたIT企業の求人へ応募しました。
社長と直接話す機会をもらい、Webデザインのスキルとポートフォリオを見てもらいました。その会社にはWebデザインを担当する人がいなかったため、私がその役割に入る形で採用されました。
会社が必要としていた仕事と、私が準備してきたスキルが合ったことが採用につながったのだと思います。
就労移行支援を利用した経験は、こちらの記事で紹介しています。

フルリモート環境でWeb制作を続けやすくなった
現在はIT企業の障害者雇用枠で、Webサイト制作、WordPress制作、ブログ運営などを担当しています。
以前の職場では、通勤電車の音やオフィスの話し声、電話などの刺激で、仕事を始める前から疲れることがありました。対面では「今話しかけてもよいか」「この言い方で失礼ではないか」と考え続け、人間関係にも多くのエネルギーを使っていました。
フルリモートになってからは、通勤と職場の刺激がなくなりました。連絡もテキストが中心なので、一度内容を整理し、送る前に確認できます。その結果、体力や集中力をWeb制作の仕事へ使いやすくなりました。
ただし、フルリモートがすべての人に合うわけではありません。私にとっては、仕事内容だけでなく、静かな環境、テキストでの連絡、体調を調整しやすい勤務体制がそろったことが大きかったです。
ASDと在宅勤務の相性や注意点は、こちらの記事で詳しく紹介しています。

発達障害がある人がWebデザイナーを目指す5つのステップ
私の経験から、最初から大きな決断をするより、次の順番で相性を確かめる方法をおすすめします。
- 小さく触ってみる
HTML・CSSで簡単なページを作る、FigmaやPhotoshopなどでバナーを作るところから始めます。 - 自分に合う学習方法を探す
動画、書籍、スクール、マンツーマンなどを試し、疑問を解消しながら続けられる方法を選びます。 - 小さな制作物を完成させる
完璧さより、目的を決めて最後まで完成させる経験を優先します。 - ポートフォリオに過程も載せる
完成画像だけでなく、誰のどんな課題を解決したか、自分がどの工程を担当したかを説明します。 - 応募先を一つに絞らない
一般求人、障害者雇用、ハローワーク、就労移行支援などを使い、自分のスキルを必要とする環境を探します。
Webデザイナーになれるかどうかは、短期間で判断できるものではありません。私も学習中に挫折し、就職活動では不採用が続きました。小さく作ってみて、苦手な部分には対策を試し、それでも続けたいと思えるかを確かめていくことが大切です。
よくある質問
まとめ:失敗を前提に、周りを頼りながら進んでほしい
Webデザインの仕事では、過集中やこだわりを活かせる場面がありました。一方で、疲労、タスク管理、工数の見積もり、修正対応など、今も工夫が必要なことがあります。
私が仕事を続けられているのは、苦手をすべて克服したからではありません。学び方を変え、分からないときは人に聞き、ポートフォリオを準備し、自分のスキルを必要としてくれる会社と、自分に合うフルリモート環境に出会えたからです。
ズーボ失敗したら、Webデザイナーに向いていないってことなのかな?



私もコーディングで挫折したし、初案件でもたくさん失敗したよ。でも、失敗したからこそ、情報設計や工数の見積もりを見直せたんだ。
まずは失敗を恐れず、失敗することを前提に前へ進んでほしいと思います。分からないことや挫けそうなときは、周りの人に頼ることも必要です。
好きなことや夢は、すぐに思いどおりにならなくても、諦めずに続けることで近づける可能性があります。自分に合う学び方と働く環境を探しながら、一歩ずつ進んでみてください。
更新履歴
第1稿投稿 2025年4月7日(記事コンテンツアップ)
第2稿更新 2026年7月23日(仕事内容、初案件、学習、就職、働き方を全面的に見直し、当事者の実体験をもとに大幅にリライト)
第3稿更新 2026年7月24日(本文図解3点を追加し、新しい記事タイトルに合わせてアイキャッチ画像を刷新)








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