「ASD(自閉スペクトラム症)の特性があっても、自立した暮らしはできるのか…?」 「一人暮らしや仕事、家事が続かない・しんどい」
そんな不安やモヤモヤを抱えている方・その家族に向けて、今日から使える“ズボラでゆるい”暮らしの工夫をまとめました。
ASDの特性そのものを変えることはできませんが、
「環境」と「やり方」を工夫することで、生活のしんどさをかなり減らし、自立に近づくことは可能だと、支援現場や研究でも繰り返し示されています。
このページでは、
- ASDの特性と「つまずきポイント」
- 家事・お金・仕事・人間関係ごとにできる具体的な工夫
- デジタルツールや支援サービスの上手な使い方
- 家族・支援者ができる「声かけ・かかわり方」
を、できるだけ小さなステップで整理しました。
ASDの「自立しづらさ」は、怠けでも性格でもない
ASDの代表的な特性
ASD(自閉スペクトラム症)は、次のような特徴を持つ発達障害の一つです。
- 対人コミュニケーションの難しさ
- 空気を読む・暗黙の了解を理解するのが苦手
- 相手の表情や声色から気持ちを推測しづらい
- こだわり・同じパターンを好む
- 予定変更が強いストレスになる
- 自分流のやり方に強くこだわる
- 感覚の過敏/鈍麻
- 音・光・匂い・肌ざわりなどに強い苦手がある
- 柔軟な切り替えの苦手さ
- 「やることが多い・選択肢が多い」と固まって動けなくなる
- 一度始めたことを切り上げるのが難しい
知的な遅れがない(いわゆる「高機能」「グレーゾーン」など)場合でも、
こうした特性が原因で、学校生活や就労、自立生活に困難が出やすいことが分かっています。
「わかっているのに、できない」はよくあること
ASDやADHDなどの発達障害のある人は、
「やるべきことは頭ではわかっている。でも、実際に行動に移せない」という状況になりやすいと多くの専門家が指摘しています。
- 片づけ方は理解しているのに、いざやろうとすると動けない
- 買い物リストを作ろうと思いつつ、後回しになる
- スケジュール帳を買っても、続かない
これらは意志の弱さや怠けではなく、脳の情報処理の特性によるものと考えられています。
だからこそ、
- 本人に合った「工夫」
- 無理をさせすぎない「環境調整」
- 周囲の理解とサポート
を組み合わせることが、生活の質と自立度を上げるカギになります。
自立をラクにする「考え方のベース」
完璧主義より「60点でOK」の暮らし方
発達特性がある人ほど、
「普通にできなきゃ」「ちゃんとしなきゃ」と完璧を目指して疲弊しがちです。
- 毎日自炊しようとして挫折
- 部屋を一度に完璧に片づけようとして固まる
- 手帳や家計簿を続けようとして三日坊主になる
重要なのは、「できる範囲で暮らしを回す」こと。
- 自炊:週3だけ+あとは惣菜でOK
- 掃除:1日5分だけ・気づいた場所だけ
- 家計管理:ざっくり「使いすぎてないか」だけ把握
など、自分基準での“ゆるい自立”を目指す方が、長い目で見ると安定します。
「工夫でカバーする」視点をもつ
ASDの特性をなくすことはできませんが、
環境ややり方を変えることで、困りごとをかなり減らすことはできます。
- 忘れやすさ → 紙ではなくスマホリマインダーに一本化
- 予定変更のストレス → 予定は前日までに共有・見える化
- 感覚過敏 → イヤーマフ・サングラス・素材を選んだ衣類
「自分に合う道具とルール」を見つけることが、自立への近道です。
家事(掃除・洗濯・料理)をラクにする工夫
掃除:やることを限界まで減らす
ASDの方は、情報量の多い環境(物が多い部屋)が負担になりやすく、
「どこから手をつければ良いか分からず固まる」ことがよくあります。
ポイントは、「モノを減らす」「手順を決めてルーティン化」すること。
- 最初にやることは“収納”ではなく“減らす”
- 同じ用途の物は1〜2個に絞る(ハサミ・マグカップ・フライパンなど)
- 使っていない物は「保留箱」を作り、1か月触らなければ処分
- 掃除の手順を固定する
- 月〜金は「床だけクイックル」
- 週末に「洗面所だけ」「キッチンのシンクだけ」
- 視覚的に見える形で「チェックリスト」にする
- 「月曜:床」「水曜:洗面台」「土曜:トイレ」のように、1日1カ所に限定
- スマホのリマインダーに「毎週●曜●時」に固定で入れる
「家全体をきれいに保とう」とせず、
“最低限ここだけ”というラインを決めると続きやすくなります。
洗濯:選択肢を減らす+ルール化
- 服の種類を絞る
- 同じ形・同じ色のTシャツや靴下を複数枚持つ
- 「迷う」要素を減らすことで、朝のストレスも減少
- 洗濯の曜日・時間を固定
- 「火・金の夜に必ず洗濯機を回す」と決めて、スマホでリマインド
- 干す動線を最短に
- 洗濯機の近くに部屋干しスペースをつくる
- ハンガーは1種類に統一して迷わないようにする
料理:がんばらない「生存自炊」
ASDの方は、段取りやマルチタスクが負担になりやすく、
料理の工程が多いとストレスが急増します。
目標は「毎日手作り」ではなく、「栄養がそこそこ取れて、破綻しない仕組み」。
- レトルト・冷凍食品を“味方”にする
- 冷凍野菜+冷凍ごはん+レトルトカレー
- 冷凍うどん+カット野菜+卵
- レシピは「3工程まで」に絞る
- 切る → 焼く → 皿に出す、のようなシンプルなものだけ
- 週に1回だけまとめて作る
- カレー・シチュー・スープなど、鍋料理を大量に作って冷凍
- 買う物を“固定メニュー”にする
- 「いつも買うものリスト」をスマホメモに保存し、毎回それを見て買う
お金管理と買い物の工夫
「細かく管理しない」からこそうまくいくことも
細かい家計簿やExcel管理は、ASDの方にとって負担が大きく続きにくい方法です。
そこでおすすめなのが、「ざっくり家計管理」。
- 固定費を最優先で見直す
- 家賃・通信費・サブスクを減らす
- 一度見直せば、あとは毎月の負担が勝手に下がる
- 「使っていい生活費」を口座や財布で分ける
- 給料が入ったら、生活費用口座に●万円だけ移す
- 残りは貯金口座に入れておき、普段は見ない
- 支払いをキャッシュレスに一本化
- レシート・小銭の管理を減らす
- アプリで月の使用額だけ確認する
「完璧な家計管理」ではなく、
「赤字にならない仕組み」を最優先にするとラクです。

衝動買い・ストック買いしすぎを防ぐ
ASDやADHD特性があると、興味のあるものへの衝動買いや、同じ物を大量にストックしてしまうケースもあります。
- 「買う前に写真を撮る」習慣
- 気になる商品は、まずスマホで撮影
- その場では買わず、家に帰ってからもう一度見て決める
- ネット通販の“お気に入り”を活用
- すぐにカートに入れず、「お気に入りリスト」に入れる
- 1週間たっても欲しければ買うルールにする
- ストックの「上限」を決める
- トイレットペーパーは●ロールまで、洗剤は●本まで
- 上限を紙に書いて、収納場所に貼っておく
スケジュール・タスク管理をシンプルにする
「頭の中で覚えない」が鉄則
ASDの方は、時間感覚やタスクの優先順位付けが難しいと言われています。
そのため、「覚えておこう」とすると抜け漏れが起きやすくなります。
- 予定はすべてスマホカレンダーに入れる
- 病院・仕事・支払い期限など
- 通知は「前日」と「当日1時間前」の2回
- やることは“1日3つまで”
- 「掃除」「買い物」「メール返信」など、大きめの単位でOK
- それ以上は翌日に回す
- 紙の「見えるリスト」も活用
- 冷蔵庫や玄関に「今日やる3つ」を貼る
- 終わったら線を引いて消す
行動のハードルを下げる工夫
- タスクを細かく分けすぎない
- 「部屋を片づける」ではなく「今日は床に落ちている服だけ拾う」
- 「5分だけやる」ルール
- やる気が出ないときは、「5分だけ」とタイマーをかける
- 5分でやめてもOK、続けたくなったら続ける
感覚過敏・ストレス対策
感覚過敏への具体的な対策
ASDのある人には、音・光・匂い・触覚などへの過敏さが多いことが研究でも報告されています。
- 音
- ノイズキャンセリングイヤホン・イヤーマフを常備
- 電車や人混みでは、音楽やホワイトノイズを流す
- 光
- ブルーライトカット眼鏡
- 部屋の照明を電球色に変える
- 服の触り心地
- タグがない服・綿素材など、自分が落ち着ける素材を固定
- 同じブランド・同じ型をリピート買いする
予定変更・イレギュラーへの備え
「予定外のこと」がストレスになりやすいのもASDの特性です。
- あらかじめ「想定外の時間」をカレンダーに入れておく
- 週末に2〜3時間「なにもしない時間」を確保しておく
- キャンセル用のルールを決めておく
- 「前日までならキャンセルOK」「月●回まではドタキャンも自分に許可」など
- 疲れたときの“避難行動”を用意
- 好きな動画を見る
- 同じ飲み物を飲む
- 暗めの静かな場所で一人になる
仕事・学び・就労での工夫
自分の特性に合う働き方を選ぶ
近年、企業側も「ニューロダイバーシティ(脳の多様性)」を生かした働き方に注目し始めており、
ASDなど発達特性のある人材を戦略的に活用する動きが出てきています。
ASDの特性を生かしやすいと言われる仕事の例:
- パターン化された作業
- 細かいチェック・検品・テスト
- データ入力・集計
- 一人で集中できる業務
一方で、
- 同時に多くのことをこなすマルチタスク
- 曖昧な指示で動く必要がある仕事
などは負担になりやすいケースが多いです。
職場で使える「環境調整」の例
- 業務の手順書を作ってもらう・自分で作る
- 写真・スケショ付きのマニュアルがあると安心
- 口頭だけでなく、チャットやメールで指示をもらう
- 聞き漏らし・解釈違いを減らす
- 仕事内容や評価基準を明確にしてもらう
- 「どこまでやればOKか」を具体的にすり合わせる
合理的配慮は、法律上、企業側が提供に努めるべきものとされており、
「これがあると働きやすい」という具体例を持って相談することが重要です。
一人暮らし・実家暮らし、それぞれの自立のかたち
一人暮らしを始める前に決めておきたいこと
- 生活の「絶対守るライン」を決める
- 例:家賃・電気・水道・通信費だけは支払いを遅らせない
- 困ったときに頼る先をリストにしておく
- 親・きょうだい・友人
- 相談支援専門員・就労支援事業所・心療内科など
- 最初から完璧な自立を目指さない
- 家事を家事代行に部分的に頼む
- 買い物はネットスーパー中心にする など
実家暮らしでも「自立度」は上げられる
実家に住んでいるからといって、「自立していない」とは限りません。
- 自分の洗濯・自分の部屋の掃除は自分でやる
- 毎月一定額を家に入れる
- 家事の一部分(ゴミ出し・風呂掃除など)を担当する
など、できる範囲で役割を持つことが、自立の練習にもなります。

家族・パートナーができるサポート
「手伝いすぎない」「突き放しすぎない」バランス
家族はつい、
- 「こんなこともできないの?」と責めてしまう
- 逆に、全部やってあげてしまう
という両極端になりがちです。
支援現場では、「できない部分は環境で補い、できる部分は本人に任せる」バランスが大切だとされています。
- 本人が苦手な「段取り・スケジュール」だけ一緒に組み立てる
- 実際の行動(掃除する・洗濯するなど)は本人にやってもらう
- うまくできたときは、小さなことでも言葉で具体的に褒める
声かけのコツ
- 抽象的:「ちゃんとして」「もっとしっかりして」
→ 具体的に:「今日は洗濯物を洗濯機に入れるところまで一緒にやろう」 - 否定的:「なんでできないの?」
→ 事実+提案:「洗濯がたまってるね。火曜と金曜にアラーム入れてみる?」
また、本人の特性と強みを理解することも重要です。
支援サービス・ツールを賢く使う
医療・福祉・就労支援を組み合わせる
発達障害のある大人の生活支援には、
- 医療(精神科・心療内科など)
- カウンセリング・心理支援
- 就労移行支援・就労継続支援
- 相談支援(計画相談など)
を組み合わせて利用することが推奨されています。
「困りごとが出てから」ではなく、「困りそうだから」早めに相談しておくと安心です。

デジタルツールの活用
現場の実例や研究でも、スマホ・タブレットなどデジタルツールを活用した支援は有効だと報告されています。
- スマホカレンダー・リマインダーで予定管理
- LINEやメモアプリで「今日やったこと」を記録
- 家計簿アプリで支出の全体像だけ把握
- オンライン家庭教師やオンライン講座で、家から学ぶ
「ゆるく自立」を続けるために
ASDの特性があると、たしかに暮らしは少し工夫が必要です。
それでも、
- 完璧を目指さず
- できることから小さく始めて
- 自分に合うやり方を試しながら育てていく
ことで、「自分らしい自立」に近づいていくことは十分に可能です。
もし今、
- 片づけが全然できていない
- お金の管理がぐちゃぐちゃ
- 将来が不安でたまらない
という状態でも、
今日できることは、「どれか一つだけ工夫を試してみる」ことです。
- 洗濯する曜日を1つ決めてスマホに入れる
- いつも行くスーパーの「いつも買うものリスト」を作る
- 5分だけ床に落ちているものを拾ってみる
そんな小さな一歩の積み重ねが、半年後・1年後には
「前よりだいぶ暮らしやすくなったかも」という実感につながっていきます。
ズボラでOK、ゆるくてOK。
あなたのペースで、あなたなりの“自立できる暮らし方”を探していきましょう。
発達特性とうまく付き合いながら暮らしを整えるヒントは、
同じように「ズボラ×ゆるい工夫」で生きていく情報を発信している
生活ハック系の発信のようなサイトからも、たくさん得ることができます。
困ったときは一人で抱え込まず、
身近な人・支援機関・専門家に相談することも、立派な自立のスキルのひとつです。

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