この記事の結論
ASDがあることだけで、一人暮らしができる・できないとは決まりません。大切なのは、家賃を払い続けられること、食事や服薬など最低限の生活を維持できること、困ったときの相談先があることです。家事を全部一人でこなす必要はなく、宅配や居宅介護などを組み合わせる方法もあります。まずは引っ越しより先に、現在の困りごとと使える支援を整理しましょう。
ズーボ一人暮らしをしてみたいけど、料理も掃除もお金の管理も不安だぞ……。



不安なまま勢いで始める必要はないよ。何が苦手かを確認して、先に仕組みと相談先を作れば、生活を安定させやすくなるんだ。
最初にお伝えしたい私の生活経験について
私は現在、パートナーと同棲しています。そのため、この記事は「私が完全な一人暮らしを長期間続けた体験談」ではありません。
一方で、同棲生活のなかでも、感覚過敏で買い物に疲れる、料理の段取りを組めない、お金の管理が難しいといった困りごとがありました。現在は、食材宅配、居宅介護の家事援助、相談支援、セーフティネット住宅などを利用しながら生活しています。
この記事では、私が生活を整えるために実践している方法と、公的機関が案内している一人暮らし関連の制度を分けて紹介します。私に合った方法が、すべての人に同じように合うとは限りません。
一人暮らしを始める前の5項目チェック
まず、次の5項目を確認してください。すべてを完璧にできる必要はありませんが、難しい項目には代わりの方法や支援が必要です。
| 確認すること | 準備できている状態の例 | 難しい場合の対策 |
|---|---|---|
| 住まい | 家賃と初期費用を把握している | 住宅相談窓口、居住支援法人へ相談 |
| 食事・家事 | 最低限の食事と衛生を保つ方法がある | 宅配、総菜、居宅介護などを検討 |
| お金 | 固定費を先に確保できる | 口座分け、家族・支援者への相談 |
| 健康 | 通院・服薬・睡眠を続ける方法がある | 通知、訪問支援、医療機関へ相談 |
| 緊急時 | 体調悪化や契約トラブルの連絡先がある | 家族、相談支援、市区町村を登録 |
特に、家賃・食事・服薬・ライフラインが止まりそうな場合は、引っ越しを急がず、先に相談先を作ることをおすすめします。
一人暮らしで起きやすい困りごとを4つに分ける
「一人暮らしが不安」とまとめて考えると、何から準備すればよいか分かりにくくなります。私は、困りごとを次の4つに分けて考えています。
1. 家事を始める・順番を決めるのが難しい
- 料理の複数工程を同時に進められない
- 掃除をどこから始めればよいか分からない
- 洗濯機を回しても、干すことを忘れる
- やることが増えると動けなくなる
この場合は、「家事ができるようになる」より、工程と選択肢を減らします。
2. 音・光・人混みで疲れやすい
- スーパーへ行くだけで疲れ切る
- 隣室や道路の音が気になって眠れない
- 照明や日差しが合わない
- 匂いや食感が原因で食べられる物が限られる
我慢だけで対応せず、物件選び、買い物方法、照明、イヤーマフなどで刺激を減らします。
3. お金の残りを把握しにくい
- クレジットカードの請求額を想像しにくい
- 小さな買い物が重なってしまう
- 固定費と自由に使えるお金を区別しにくい
- 急な出費へ備えられない
細かな家計簿より先に、固定費を確保し、使ってよいお金を分けます。
4. 困っても相談するタイミングが分からない
- 生活が崩れてから初めて周囲へ伝える
- どの窓口へ相談すればよいか分からない
- 支援を頼ることに抵抗がある
- 電話や手続きが負担で後回しになる
一人暮らしを始める前に、連絡先と「どの状態になったら相談するか」を決めておきます。
私が食事を安定させた方法|宅配と居宅介護を組み合わせる
私の場合、食事で困っていたのは次の3点でした。
- スーパーの音や人混みで疲れる
- 何を買うか店内で決められない
- 食材を買っても、料理の段取りを組めない
そこで、食材を用意する部分と、調理する部分を別々の方法で補っています。
おうちコープで買い物の負担を減らす
私は、生協の宅配サービス「おうちコープ」を利用しています。自宅で商品を選び、週に一度届けてもらえるため、スーパーへ行く回数を減らせました。
特に助かっているのは冷凍食品です。体調や気力に余裕がない日でも、保存してある物を温めれば食事を取れます。「今日中に調理しなければ」と賞味期限に追われにくい点も、私には合っていました。
ただし、宅配を利用すれば誰でも食費が下がる、料理ができるようになる、というものではありません。宅配料、注文方法、最低注文条件、商品価格などを確認し、自分の生活に合うか判断する必要があります。
おうちコープが候補になる人: 神奈川・静岡・山梨に住んでいて、スーパーの刺激や重い荷物の持ち運びを減らしたい人、自宅で冷凍食品や日用品を選びたい人です。
配達対象地域や利用方法は資料で確認できます。
居宅介護の家事援助で調理を補う
食材が届いても、調理ができなければ食事は安定しません。私は障害福祉サービスの居宅介護を利用し、週に一度、ヘルパーさんに調理の作り置きをお願いしています。
私の場合は一度に3〜5品ほど作ってもらい、疲れている日は温めて食べています。これは私に支給決定された内容であり、利用できる回数や援助内容は人によって異なります。
厚生労働省は、居宅介護について、自宅での入浴・排せつ・食事の介護や、調理・洗濯・掃除などの家事、生活に関する相談・助言などを行うサービスと説明しています。実際の利用可否と内容は、市区町村が本人の状態や生活状況などを確認して決定します。
利用を希望する場合は、市区町村の障害福祉窓口や相談支援事業所へ「どの家事が、どのように難しいか」を具体的に伝えてください。障害者手帳の有無だけで自己判断せず、地域の窓口へ確認するのが確実です。
掃除と洗濯は「最低限の終了条件」を決める
家事は、一般的な理想より「生活を止めない基準」を決めると続けやすくなります。
掃除
- 床全体ではなく、通路だけ確保する
- 月曜は床、水曜は洗面台など場所を分ける
- ゴミ袋がいっぱいになったら玄関へ移動する
- 物を捨てられないときは保留箱へ入れる
洗濯
- 洗濯する曜日を固定する
- 洗濯終了時刻にもスマホ通知を入れる
- 服をたたまず、ハンガーのまま収納する
- 同じ種類の服や靴下をそろえる
毎日きれいな状態を保つ必要はありません。衛生や安全へ影響する前に戻せる仕組みを作ります。
お金は「固定費」と「使ってよいお金」を先に分ける
私は以前、クレジットカードで使った金額を把握しにくいことがあり、現金と封筒を中心に管理する方法へ変えました。
私が行っている管理方法
- 月の生活費を確認する
- 週ごとの予算を封筒へ分ける
- その週は封筒に入っている範囲で使う
- 余った分は別に保管する
現金が合うか、デビットカードや専用口座が合うかは人によって違います。大切なのは、家賃や光熱費へ使うお金と、自由に使ってよいお金が混ざらないことです。
一人暮らしを始める前に、住みたい地域や契約条件に合わせて、次の費用を見積もっておきましょう。
| 費用 | 確認する内容 |
|---|---|
| 初期費用 | 敷金・礼金、仲介料、保証料、引っ越し、家具家電 |
| 毎月の固定費 | 家賃、管理費、電気、ガス、水道、通信、保険 |
| 変動費 | 食費、日用品、交通費、医療費、宅配料 |
| 予備費 | 家電の故障、通院、更新料など |
生活費は、地域や住まい方によって大きく変わります。全国平均だけで判断せず、希望する物件の家賃と現在の支出をもとに計算すると、必要な金額を具体的に把握できます。
詳しいお金の管理方法はこちらの記事で紹介しています。


ASDの特性を考えた住まい選び
家賃だけでなく、毎日受ける刺激と生活動線を確認します。
内見で確認したい項目
- 窓を閉めた状態で道路や隣室の音が気になるか
- エアコン、換気扇、給湯器などの音が負担にならないか
- 日差しや照明が強すぎないか
- ゴミ置き場まで迷わず移動できるか
- 洗濯機から干す場所まで動きやすいか
- スーパー、病院、駅などへ無理なく行けるか
- 宅配ボックスや置き配を利用できるか
木造なら必ずうるさい、鉄筋コンクリートなら必ず静か、とは限りません。可能であれば内見し、時間帯や周辺環境も確認します。
感覚過敏が強い場合は、家族や支援者にも同行してもらい、自分が疲れて見落としやすい点を一緒に確認する方法があります。
セーフティネット住宅は「登録住宅=家賃補助」ではない
セーフティネット住宅は、高齢者、障害者、低額所得者など、住宅の確保に配慮が必要な人の入居を拒まない賃貸住宅として登録された住宅です。
私はセーフティネット住宅へ入居し、自治体の家賃低廉化支援を受けています。私の場合は結果として家賃負担が大きく下がりましたが、これは全国の登録住宅で自動的に受けられる制度ではありません。
国土交通省によると、家賃などの低廉化補助は、対象住宅、所得、自治体が補助を実施しているかなどの条件があります。登録住宅を見つけても、家賃補助の対象になるとは限りません。
確認する順番は次のとおりです。
- セーフティネット住宅情報提供システムで物件を探す
- 自治体が家賃低廉化補助を実施しているか確認する
- 住宅窓口や居住支援法人へ相談する
- 収入・世帯・物件などの対象条件を確認する
- 補助を前提に契約せず、決定後の自己負担額を確認する
一人暮らし前に相談できる支援を目的別に整理
使える福祉サービスが分からない
市区町村の障害福祉窓口、基幹相談支援センター、相談支援事業所などへ相談します。生活全体の困りごとを伝え、計画相談支援や居宅介護などの対象になるか確認します。
家事を一人で行うことが難しい
居宅介護の家事援助が候補になります。支援内容は個別に決定されるため、「料理が苦手」という言葉だけでなく、買った食材を腐らせる、火を同時に使うと混乱するなど、実際に起きていることを伝えます。
仕事と生活を一緒に整えたい
障害者就業・生活支援センターでは、就業面と生活面を一体的に相談できます。就職前の訓練が必要な場合は、就労移行支援なども候補です。


生活費や家計が不安
自治体の生活困窮者自立相談支援機関では、家計、仕事、住まいなどを相談できます。福祉サービスの利用手続きや金銭管理に継続的な援助が必要な場合は、社会福祉協議会の日常生活自立支援事業が対象になる可能性もあります。
障害年金を確認したい
障害年金は、診断名があるだけで受給できる制度ではありません。初診日、保険料納付、障害の状態などの要件があります。私は障害基礎年金2級を受給していますが、私の結果がほかの人にも当てはまるわけではありません。
年金額も年度によって変わります。年金事務所、街角の年金相談センター、主治医などへ相談し、日本年金機構の最新情報を確認してください。
一人暮らしを始めるまでの6ステップ
ステップ1|現在の困りごとを一週間記録する
食事、掃除、お金、服薬、睡眠など、止まったことと原因を短く記録します。
ステップ2|最低限守る生活ラインを決める
「毎日自炊する」ではなく、「一日二回は何か食べる」など、無理のない基準にします。
ステップ3|使える支援を相談する
引っ越し後ではなく、現在住んでいる地域の障害福祉窓口や相談支援事業所へ先に相談します。転居先で手続きが必要になる場合も確認してください。
ステップ4|実際の費用を計算する
希望物件の家賃と固定費を使い、毎月残る金額を確認します。家賃補助や年金などは、利用・受給が決まっている範囲だけで計算します。
ステップ5|一人暮らしを試す
家族が家事を代わっている場合は、一週間だけ自分で洗濯や食事管理を試します。ショートステイや宿泊型自立訓練などが利用できるか、地域の窓口へ相談する方法もあります。
ステップ6|緊急時の連絡表を作る
- 体調を崩したとき
- お金が足りなくなったとき
- 電気や水道などのトラブル
- 契約や訪問販売で困ったとき
- 家事が止まったとき
それぞれ一つずつ連絡先を決め、スマホと紙の両方へ残します。
今は一人暮らしを急がないほうがよいサイン
次の状態がある場合は、一人暮らしを諦めるのではなく、準備期間を増やします。
- 家賃や初期費用を計算していない
- 食事や服薬が頻繁に止まっている
- 強い不眠や気分の落ち込みが続いている
- 困ったときに連絡できる人や窓口がない
- 家族から離れることだけを目的に急いでいる
- 補助金や年金を受け取れる前提で契約しようとしている
家庭内の暴力など、安全上すぐ離れる必要がある場合は、自分だけで物件を探さず、市区町村、配偶者暴力相談支援センター、警察などへ相談してください。
ASDの一人暮らしに関するよくある質問
ASDがあると一人暮らしは難しいですか?
困りごとの種類や程度、収入、周囲の支援などによって異なります。ASDという診断名だけで判断することはできません。家事が難しくても、宅配や福祉サービスなどを組み合わせて生活を維持できる場合があります。
家事ができないと一人暮らしはできませんか?
すべてを自分で行う必要はありません。冷凍食品、総菜、ネットスーパー、家事代行、居宅介護などを組み合わせる方法があります。公的サービスには利用条件があるため、市区町村へ相談してください。
障害者手帳がないと居宅介護を利用できませんか?
利用条件や必要書類は、本人の状況や自治体の手続きによって異なります。手帳がないことだけで利用できないと自己判断せず、市区町村の障害福祉窓口へ確認してください。
セーフティネット住宅なら家賃補助を受けられますか?
登録住宅へ入居するだけで、自動的に家賃補助を受けられるわけではありません。自治体が補助を実施しているか、物件や所得などの条件を満たすかを確認する必要があります。
最初にどこへ相談すればよいですか?
障害福祉サービスを含めて相談したい場合は、市区町村の障害福祉窓口や相談支援機関が入口になります。住まいだけの相談なら、自治体の住宅窓口や居住支援法人も候補です。
まとめ|一人暮らしは、支援を使わずに暮らす試験ではない
ASDがある人の一人暮らしで大切なのは、すべての家事を一人でできることではありません。
- 家賃と生活費を現実的に計算する
- 食事・服薬・衛生を維持する方法を決める
- 音や光など、自分に合う住環境を確認する
- 苦手な家事は宅配や支援で補う
- 困る前に連絡できる相談先を作る
私は一人暮らしの長期経験者ではありませんが、同棲生活のなかで、自分だけでは難しい家事や生活管理を支援で補ってきました。支援を利用するようになって分かったのは、「全部自分でやること」より「生活が続く方法を選ぶこと」のほうが大切だということです。
まずは一週間、食事・家事・お金・体調で困った場面を記録してください。その記録を持って相談窓口へ行くことが、一人暮らしの現実的な準備になります。
更新履歴
第1稿投稿 2025年10月29日 10時48分(記事コンテンツアップ)
第2稿更新 2026年7月15日 12時50分(費用の目安・相談先・よくある質問を追加、表現を一部見直し)
第3稿更新 2026年7月21日(おうちコープの対象地域を明記し、SWELL広告ボタンへ改善)
第4稿更新 2026年7月21日(一人暮らしと同棲経験を明確に分け、準備・生活対策・住まい・制度・相談先の順へ全面リライト)


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